資金調達
開業に必要な資金を割り出す
飲食店開業にあたり、最大の出費となる店舗物件取得費は、物件により条件が異なります。
開業資金の60%を自己資金でまかないたいものです。
開業資金の内訳は、
①店舗物件取得費用
②内装・設備工事費
③什器・備品費
④仕入れ費
⑤広告・宣伝費
です。
①は、敷金(保証金)、礼金(権利金)、前家賃、不動産屋への手数料です。
- 開業資金の一例
ドリンクメインのカフェ
<立地>
名古屋市内地下鉄桜通線沿い
⚫︎駅から5分の住宅地
⚫︎築年/2001年
⚫︎鉄骨1階部分
⚫︎敷金2ヶ月分・礼金6ヶ月分
⚫︎保証金/なし
⚫︎使用部分面積/30坪
店舗物件取得費 | 180万円 |
---|---|
内装・設備工事費 | 850万円 |
什器・備品費 | 200万円 |
仕入れ費 | 30万円 |
広告・宣伝費 | 5万円 |
合計 | 1265万円 |
- 家賃の目安
気になる家賃は、坪あたり1万円で30万円、共益費も別途かかります。
投資計画は、総投資額の坪単価40〜60万円が目安です。
上記の場合約42万円となり、それより高い場合は交渉の余地があります。
店舗取得費は、敷金と礼金の代わりに保証金の場合があります。
保証金の場合、家賃の10ヶ月分が目安です。
- 開業資金の内訳
費用 内訳 目安 店舗物件取得費 敷金 家賃の1〜2ヶ月 礼金 家賃の1〜2ヶ月、ゼロの場合あり 保証金 家賃の10ヶ月分だが様々。保証金ゼロで敷金6ヶ月もあり 権利金 不動産仲介手数料 家賃一ヶ月分 内装・設備工事費 内外装 坪あたり60万円が目安 設備工事費 坪あたり20万円が目安 空調工事費 什器・備品費 厨房機器 椅子・テーブル レジスター 音響設備 30万円程度が目安 食器・調理器具 坪あたり3万円が目安 業務用消耗品 10万円程度が目安 メニュー表など制作費 40万円程度が目安 仕入れ費 食材 消耗品など その他 広告・宣伝費 ショップカード チラシ 求人募集費 その他
開業後に必要な運転資金を想定
オープンからお店が軌道にのるまでを考え、運転資金の確保が必要です。
理想は、現金支払総額の3〜6ヶ月分。
資金借入のとき、あらかじめ運転資金分を組み入れての申請がお勧めです。
運転資金には、
①店舗維持費
②人件費(正社員)
③人件費(パート・アルバイト)
④仕入れ費
⑤備品費
⑥諸経費
などがあります。
①と②は固定費で、売上に関わらず、定額を定期的に支払わねばなりません。
固定費の割合が高いほど、店舗経営は困難になりますので、最初から固定費を低く設定する努力が必要です。
資金繰り表の一例
項目 | 1月(千円) | 2月(千円) | 3月千円) | |
繰越資金 | a | 500 | 1095 | 340 |
---|---|---|---|---|
収入 | 現金売上 | 2000 | 1500 | 3000 |
その他収入 | ||||
計 b | 2000 | 1500 | 3000 | |
支出 | 現金仕入 | 500 | 300 | 500 |
買掛金 | 700 | 700 | 300 | |
給与支払 | 900 | 900 | 900 | |
リース料 | 50 | 50 | 50 | |
家賃 | 200 | 200 | 200 | |
消耗品費 | 20 | 20 | 20 | |
交際費 | 10 | 10 | 10 | |
交通費 | 10 | 10 | 10 | |
支払手数料 | 10 | 10 | 10 | |
雑費 | 5 | 5 | 5 | |
その他経費 | ||||
計 c | 2405 | 2205 | 2005 | |
資金過不足 | d (b - c) | -405※ⅰ | -705※ⅱ | 995 |
借入収支 | 借入 e | 1000 | ||
返済 f | 50 | 50 | ||
資金残高 | 手許資金(a+d+e)-f | 1095 | 340 | 1285 |
※ⅰ不足のため借入が必要!
※ⅱ不足のため前月の借入分を!
運転資金は上表のような具合に必要です。
資金過不足になっても、家賃など固定費は定額を定期的に支払う期日は訪れます。
そのように、実収入か少なくても滞りなく支払えるようしておくため、運転資金が必要なのです。
自己資金の算出
開業資金と開業直後の運転資金のおおよそがつかめたら、それをいかにして用意するかを考えます。
自己資金は総投資額の6割を用意したいもの。
公的機関から調達するにも、自己資金をどれだけ用意できるかが、融資・出資の条件となることが多いので、綿密な洗い出しが大切です。
当たり前ですが、借入か少ないほど、開業後の運営がスムースにいき、精神的苦痛も少なくなります。
自己資金の洗い出し
- 預貯金は?
- 積立金などは?
- 保険の見直しは?
- 身内からの援助は?
当面の生活費の確保もお忘れなく。
最低3ヶ月分の生活費は用意しておきましょう。
足りない資金の算出
自己資金の洗い出しが終わったら、足りない額がわかってきます。
ここで再度、見直しをかけます。
節約や縮小できる部分かないか、じっくり検討してください。
この作業は、開業後のコスト削減に対する技術力に繋がります。
開業日を定めて準備を開始することは大切でも、肝心な資金が足りなければ、開業日の延期を考えなくてはなりません。
要注意なのは、開業資金を惜しんだばかりに、納得のいくお店作りができなくなることです。
納得できる妥協点を見出すことが必要です。
再度の見直し
- 自己資金を増やせないか?
「いつまでにいくら貯金する」など、明確に目標額を定めます。
目標が明確なら、働き甲斐も出てきます。
- 開業資金を減らせないか?
什器や備品は中古を狙う、または手持ちのものが使えるかなど、節約を検討します。
また、予定より、店舗を狭くする、立地を見直すなど、資金にあわせて縮小する方法もあります。
- 不足分は貰えないか?
身内からの援助、または、国や自治体の助成金を利用は可能かを調べます。
また、什器や備品といった現物をもらえるかも考えます。
- 不足分は借りるのか?
どうしても足りない分は、日本政策金融公庫などの公的機関、銀行なとの民間金融機関、市民団体などから借り入れします。
足りない資金の調達
借入といってすぐに思いつく銀行は、実は期待薄です。
実績のない新規事業開業者が都市銀行から融資を受けることは、非常に困難です。
新規開業の個人事業主にとり、一般的なのは、日本政策金融公庫です。
地域や業種に偏りなく、幅広い融資を行っています。
また、都道府県や市区町村などの自治体が、積極的に融資を行うケースが増えています。
他にも、地域社会の担い手となる事業や、女性の起業に融資を行う市民バンクといった機関もあります。